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定格発電量の基準となる環境

定格発電量の基準となる環境

自然環境の中では目まぐるしく変化する日射量により、太陽電池の性能を比較することは難しいです。しかし太陽電池メーカーのカタログには発電量が記載されていますよね。

これは太陽電池を測定・比較し、性能評価としての「発電量」を測定するための基準が定められており、それに従い測定結果を記載しています。その測定環境は下記のようになっています。

「モジュール表面温度25℃、分光分布AM(エアマス)1.5、放射照度1000W/平方メートル」の状態での発電量。」(JIS規格JIS C 8914)

ちょっとわかりにくいので、この基準について1つずつ解説してみます。

モジュール表面温度25℃

太陽電池は原料となるシリコンの特質が原因で、温度によって性能が変わります。
「温度が高くなると発電効率が低下し、逆に温度が下がると効率が上昇する」という性質があり、発電量の正しい評価測定のためにモジュールの表面温度を標準状態(25℃)と定められています。

分光分布AM(エアマス)1.5

「エアマス(Air Mass)」とは太陽の光が地上に届くまでに通過する大気の量を表します。

太陽光は大気を通して地表面に届きます。太陽光は大気を通過中に散乱や吸収を受けますので大気圏外の値よりも地表面に届く光は弱くなります。
この減衰量は大気の状態によって大きく影響を受け、また太陽光の波長によっても影響の大きさが変わります。

太陽光は大気中の空気分子などによって散乱を受けます。吸収の現象は特定の波長に限られていますが、散乱による減少は全波長に現れ、特に短波長領域に大きく現れます。

分光分布エアマス

太陽を真上から受けた時の日射は「AM1」。大気圏外では「AM0」朝日や夕日などのように入射角が低くなると、AMの数値が大きくなります。

空気分子による散乱量は、波長の4乗に逆比例するといわれ、短波長の光は大気の層を通過する際に著しく散乱を受け長波長の光はほとんど散乱を受けません。このため空が青く見え、朝夕に太陽が赤く見えることになります。

つまりAMの数値が大きくなるほど、赤い光が多くなるのが特徴です。これは短い波長の光が大気に吸収されてしまうからです。逆にAMが小さくなると青い光が強くなります。

太陽電池にはそれぞれ個性があって、種類によって光の波長に対する感度が異なります。したがって発電量を正しく評価測定するためにはこのAMを一定にする必要があるというわけです。

ここで基準になっている「AM1.5」の太陽光はAM1よりも空気層を1.5倍長く通るので吸収や散乱量はその分大きくなり、太陽高度42度に相当します。日本ではこの「AM1.5」という値が標準で使われています。

「エアマス(Air Mass)」とは太陽の光が地上に入射するまでに通過する大気の量ということです。

放射照度1000W/平方メートル

放射照度というのは、まさに日射量のことです。簡単に言えば「光のエネルギーの強さ」で、1000W/平方メートルだと、「1平方メートルあたり1000Wの光エネルギーが入ってくる状態」を指しています。

つまり「温度25℃で(AM-1.5)の状態で1000Wの光エネルギーから取り出せる電気エネルギーの量」が太陽電池の定格出力と決められています。
従って、この基準値に準じた状態で130Wの電気が取り出せる太陽電池なら、その太陽電池の光エネルギーから電力への変換効率は 130W/1000W=13%ということになる訳です。

発電量は常に変化

この基準の状態は、極めて理想的な状態であり、自然界でこのような環境を作り出すのはまず不可能です。

「放射照度」いわゆる日射量は雲や大気の状態で大きく変わります。時間帯や屋根の状態により「AM」も変わってきます。気温も常に25℃であることはありません。

したがって、このような測定を行うにはソーラーシミュレータという特殊な測定器を使います。このソーラーシミュレータで基準となる環境状態を作り、その中で対象となる太陽電池の性能を調べるのです。

各メーカーの太陽電池のカタログには、この基準に基づいて測定された数値が掲載されているということになります。

つまり、太陽電池のカタログに「発電量」として記載されている数字は、ある特殊な環境の下で測定された数値であり、実際の数値は設置の条件によって様々だということになります。
規定の「発電量」より多く発電する場合や少なく発電する場合もあり、常にカタログに記された「発電量」を発電し続ける訳ではないということになります。

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